関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)は、自己免疫疾患の一つで、関節を包む膜である滑膜(かつまく)に慢性的な炎症が起こり、痛みや腫れを引き起こし、進行すると関節の破壊や変形に至る全身性の病気です。

1. 関節リウマチのメカニズムと原因
メカニズム(病態)
本来、外部の敵から体を守るための免疫システムに異常が生じ、誤って自分自身の関節組織(滑膜)を攻撃してしまうことで炎症が起こります。
- 滑膜の炎症: 免疫細胞が関節内の滑膜に集まり、炎症物質(サイトカイン:TNF$\alpha$やIL-6など)を大量に放出します。
- 滑膜の増殖: 炎症が続くと、滑膜が異常に増殖して腫れ上がり、パンヌス(炎症性肉芽組織)を形成します。
- 関節の破壊: パンヌスが軟骨や骨を浸食し、徐々に関節が破壊され、変形して機能障害を起こします。
原因
原因はまだ完全に解明されていませんが、以下の要因が関与していると指摘されています。
- 遺伝的要因: 特定の遺伝子の型を持つ人は発症しやすい傾向があります。
- 環境要因: 喫煙、細菌やウイルスの感染、歯周病、過労やストレスなどが発症のきっかけとなることがあります。
- 性別・年齢: 女性は男性の約4倍発症しやすく、30〜60歳代での発症が多いとされています。
2. 主な症状
関節リウマチの症状は、関節症状と全身症状に分けられます。
特徴的な関節症状
- 朝のこわばり: 朝起きたとき、手足の指や手首の関節が固まって動かしにくい症状。通常、30分以上続きます。
- 関節の腫れと痛み:
- 手足の小さな関節(指の付け根や手首、足の指の付け根)に起こりやすい。
- 左右対称に複数の関節で症状が現れることが多い。
- 炎症が強くなると、安静にしていても熱感(熱っぽさ)や痛みが生じます。
- 進行による変形: 病気が進行すると、軟骨や骨が破壊され、指が曲がったり脱臼したりといった関節の変形(機能障害)が生じます。
全身症状
関節以外にも、全身に慢性的な消耗症状が現れます。
- 全身倦怠感・疲労感
- 微熱(37℃台)
- 食欲不振、体重減少
- 貧血
- 眼の乾燥や口腔内の乾燥(シェーグレン症候群の合併)
3. 診断と治療の重要性
診断
診断は、リウマチ専門医が問診、診察、血液検査、画像検査を総合して行います。
- 血液検査: リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体(関節破壊と関連が深い)などの有無や、炎症の程度を示すCRP(C反応性タンパク)や赤沈(赤血球沈降速度)を調べます。
- 画像検査: X線検査で骨・軟骨の破壊の進行度を確認するほか、超音波(エコー)検査やMRI検査で炎症の状態を詳細に評価します。
治療の重要性
関節リウマチは、発症から2年以内が最も急速に関節破壊が進む時期であることが分かっています。一度破壊された関節は元に戻らないため、早期に発見し、適切な治療を始めることが、関節破壊の進行を抑え、運動機能を保つ上で非常に重要です。
治療の基本
治療の基本は薬物療法であり、目標は病気の活動性を抑え、寛解(病気の症状や炎症がない状態)を維持することです。
- 抗リウマチ薬(DMARDs): 関節破壊の進行を抑える薬で、治療の基本となります。(例:メトトレキサートなど)
- 生物学的製剤・JAK阻害薬: 従来の薬で効果が不十分な場合に使用される、より強力に炎症を抑える注射薬や内服薬です。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)/ステロイド: 炎症や痛みを和らげるために用いられますが、関節破壊の進行自体を抑える効果はありません。
- リハビリテーション・手術: 関節の機能維持や、変形が進んだ場合の再建手術が行われることもあります