耳鳴り(みみなり、Tinnitus)は、実際には音が鳴っていないのに、キーン、ジー、ボーといった音を自覚する症状です。
非常に一般的な症状で、多くの場合は一過性で自然に治まりますが、中には治療が必要な病気が原因となっている場合や、慢性化して生活の質(QOL)を大きく低下させる場合もあります。

👂 耳鳴りの主な原因
耳鳴りの原因は多岐にわたりますが、多くの場合、内耳(音を電気信号に変える器官)や聴覚神経の異常によって、脳が**「音がないのに音を感じてしまう」**状態になると考えられています。
1. 耳の病気によるもの(末梢性の原因)
- 突発性難聴: 突然片耳が聞こえなくなる病気で、多くの場合、難聴に伴って耳鳴りも発症します。緊急性の高い疾患です。
- メニエール病: 激しい回転性のめまい、難聴、耳鳴りの3つが特徴です。内耳のリンパ液が増えすぎる(内リンパ水腫)ことで起こるとされています。
- 加齢性難聴: 年齢とともに聴力が低下することで、脳が聞こえない音を補おうとして耳鳴りを感じやすくなります。
- 外耳炎・中耳炎: 炎症や滲出液(しんしゅつえき)の貯留によっても一時的に耳鳴りが生じることがあります。
- 音響外傷: 大音量の音楽や騒音を聴いた後に起こる耳鳴りです。
2. その他の原因(中枢性・全身性の原因)
- 自律神経の乱れ・ストレス: 強いストレスや疲労、睡眠不足などにより自律神経のバランスが崩れると、耳鳴りが悪化したり、発症したりすることがあります。
- 高血圧・糖尿病: 全身の血流が悪くなる疾患は、内耳の血流にも影響を与え、耳鳴りの原因となることがあります。
- 首や肩のコリ: 首や顎関節の筋肉の緊張が、聴覚に関わる神経や血流に影響を与え、耳鳴りとして感じられることがあります。
- 薬剤の副作用: 一部の薬(抗生物質、鎮痛剤など)の副作用として耳鳴りが起こることがあります。
🩺 耳鳴りの治療と対処法
1. 医療機関の受診
耳鳴りが始まったら、まずは耳鼻咽喉科を受診してください。特に以下の場合は、早急な受診が必要です。
- 突然、片耳だけが聞こえにくくなった場合(突発性難聴の可能性)。
- めまいや激しい頭痛を伴う場合。
- 耳鳴りが数日以上続く場合。
2. 治療の基本
- 原因疾患の治療: 突発性難聴や中耳炎など、原因が特定できればその治療を行います(例:ステロイド剤の投与、抗生物質など)。
- 薬物療法: 症状に応じて、血流改善薬、ビタミン剤、漢方薬、抗不安薬などが使われます。
- 音響療法(TRT: Tinnitus Retraining Therapy): 脳が耳鳴りを「危険な信号」として認識しないように慣らす治療法です。日常生活音や特殊な音を常に流し、耳鳴りへの意識を逸らすことを目的とします。
3. 日常生活でのセルフケア
- ストレス管理と良質な睡眠: 自律神経の乱れを整えることが最も重要です。規則正しい生活、リラックスできる時間を作りましょう。
- 静かな環境を避ける: 無音の状態は、かえって耳鳴りを強調してしまいます。静かすぎる場所では、BGMや自然音(ホワイトノイズなど)を小さく流すようにすると、耳鳴りが気になりにくくなります。
- 難聴のケア: 難聴を伴う場合は、補聴器を使うことで聞こえが改善し、結果的に耳鳴りが軽減されることがあります。
耳鳴りは完治が難しい場合もありますが、治療と適切なセルフケアで**「慣れる(馴化)」**させることで、生活の質を大きく改善できます。