睡眠不足(寝不足)は、単に「日中眠くなる」だけでなく、脳と体のあらゆる機能に深刻な悪影響を及ぼす状態です。睡眠は、脳内の老廃物の掃除、記憶の整理、細胞の修復、免疫力の向上など、生命維持に不可欠な「メンテナンス時間」だからです。

🧠 睡眠不足が引き起こす主な影響
1. 脳機能・精神面への影響
- 集中力・判断力の低下: 徹夜明けの脳の状態は、「酒気帯び運転」と同程度の認知能力まで低下すると言われています。
- 感情の不安定化: 脳の「感情のブレーキ」を司る部分(前頭葉)の働きが弱まり、イライラしやすくなったり、不安を感じやすくなったりします。
- 記憶力の減退: 寝ている間に記憶が定着するため、睡眠が足りないと学習効率が著しく下がります。
2. 体・代謝への影響(前回の代謝の話との関連)
- 太りやすくなる: 食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、食欲を増進させるホルモン(グレリン)が増えるため、高カロリーなものを欲するようになります。
- 免疫力の低下: 風邪などの感染症にかかりやすくなり、ワクチンなどの効果も出にくくなります。
- 肌荒れ: 成長ホルモンの分泌が減り、肌のターンオーバーが乱れます。
⚠️ 慢性的な睡眠不足が招くリスク
睡眠不足が長期化(睡眠負債の蓄積)すると、以下のような生活習慣病のリスクが急増します。
| 項目 | リスクの内容 |
| 高血圧・心疾患 | 交感神経が優位な状態が続き、心臓への負担が増える。 |
| 糖尿病 | インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなる。 |
| うつ病 | 脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、メンタル不調を招く。 |
| 認知症 | 脳の老廃物(アミロイドβなど)が排出されず、蓄積しやすくなる。 |
🌙 質の良い睡眠をとるための対策
「時間」だけでなく「質」を高めることが重要です。
- 朝の太陽光を浴びる:
- 起きてすぐに光を浴びることで、約14〜16時間後に眠気を作るホルモン(メラトニン)が分泌されるスイッチが入ります。
- スマホのブルーライトを避ける:
- 寝る1〜2時間前はスマホやPCを控えましょう。強い光は脳に「昼間だ」と勘違いさせ、眠りを妨げます。
- 入浴は寝る90分前に:
- お風呂で一時的に上がった「深部体温」が、下がっていくタイミングで眠気が強く訪れます。
- 休日も起きる時間を変えない:
- 休日の「寝だめ」は体内時計を狂わせ、月曜日の体調不良(社会的時差ボケ)の原因になります。